試行錯誤ログ

レトロポスターをAIで作るプロンプト術|1920年代アメリカのアールデコ風ポスター・雑誌表紙を再現してみた

2026年10月14日

レトロポスターの雰囲気って、なんであんなにカッコいいんでしょうね。特に1920年代のアメリカ。ジャズ、摩天楼、豪華客船、フラッパーと呼ばれた短髪の女性たち……。古い雑誌の表紙を眺めているだけで、なんだか時間が溶けていきます。

そこで「これ、画像生成AIで作れないかな?」と思い立ち、さっそく試してみました。ところが、いざ「1920年代のレトロなポスター」と打ち込んでみると、出てくるのはなんとなく古そうだけど、どの時代でもない絵。50年代のダイナー風だったり、妙にツヤツヤした3DCGだったり。あれ、こんなはずでは??

この記事では、非デザイナーの筆者が実際に試行錯誤した内容をもとに、レトロポスターをAIで作るためのプロンプトの組み立て方と、アールデコ ポスターをAIで「それっぽく」ではなく「ちゃんと1920年代に」寄せるコツをまとめています。アメリカ・フランス・ドイツ・中国の情報も参考にしているので、良かったら最後までお付き合いください。

AIで生成した1920年代アールデコ風レトロポスター。金と黒の放射線模様を背景に摩天楼がそびえる縦長ポスター

そもそも「1920年代アメリカのレトロ」ってどんな絵?

プロンプトを書く前に、ここをハッキリさせておかないと迷子になります。筆者は最初ここをすっ飛ばして、30分くらいガチャを回し続けました。筆者が悪かったでござる。

ざっくり言うと、1920年代アメリカのポスターや表紙には大きく2つの系統があります。ひとつはヨーロッパ発の「アールデコ」、もうひとつはアメリカの雑誌文化が育てた「表紙イラスト」です。

アールデコ ポスターの特徴は「幾何学・左右対称・金属っぽい色」

アールデコという名前は、1925年にパリで開かれた装飾芸術の博覧会が由来です。アメリカのスミソニアン協会の講座資料によると、この博覧会には半年で1600万人以上が訪れ、そこから広告ポスターを通じて世界中にスタイルが広がっていったそうです。

参考:Smithsonian Associates(アメリカ)ページ:Art Deco HANDOUThttps://smithsonianassociates.org/ticketing/attachments/260613/pdf/Art-Deco-HANDOUT

この博覧会で注目を集めたポスター作家が、フランスのカッサンドルです。フランスの百科事典ユニヴェルサリスによると、彼の代表作「Au Bûcheron」は1925年の博覧会に合わせて新しい版が発表され、グランプリを受賞しています。同事典では、彼が幾何学的で記念碑的な手法でポスターを刷新しようとし、文字(タイポグラフィ)に決定的な役割を与えたと解説されています。つまりアールデコ ポスターは「絵」と同じくらい「文字」が主役なんですね。これ、あとでAIの文字検証をするときに効いてきます。

参考:Encyclopædia Universalis(フランス)ページ:CASSANDRE ADOLPHE JEAN-MARIE MOURON dit (1901-1968)https://www.universalis.fr/encyclopedie/adolphe-jean-marie-mouron-dit-cassandre/

ちなみにドイツのケーテ・コルヴィッツ美術館(ケルン)は、パリのアールデコのグラフィックを紹介する展覧会で、植物のような曲線と厳格な幾何学という一見矛盾する要素を同居させたのがアールデコだと説明しています。ここがAIで作るときの落とし穴でもあるので、覚えておいてください。

参考:Käthe Kollwitz Museum Köln(ドイツ)ページ:ART DÉCO – Graphic design from Parishttps://www.kollwitz.de/en/art-deco

アメリカの雑誌表紙は「写実から様式化へ」の過渡期

もう一方の系統が、アメリカの雑誌表紙です。アメリカのイラストレーション史をまとめたサイトでは、それまで現実をそのまま描くのが主流だった雑誌イラストが、1920年代にデフォルメされた様式的な表現へと移り変わり始めたと解説されています。もちろん雑誌や作家によって差はあるので、「そういう流れがあった」くらいに捉えておくのがちょうどいいです。

参考:History of Illustration(アメリカ)ページ:The Decade 1920-1930https://www.illustrationhistory.org/history/time-periods/the-decade-1920-1930

また、デラウェア美術館の記事によると、1920年代はファッションイラストの「黄金期」と呼ばれた時代です。一方で、写真も1920年代初めから雑誌の誌面に進出していて、1932年には『Vogue』が初めて写真の表紙を採用したそうです。つまり1920年代は、イラストの表紙が広く活躍しつつ、写真がじわじわ迫ってきていた時代。今回はその中のイラスト表紙を参考にするので、AIに「写真っぽく」させないことが大事なポイントになります。

参考:Delaware Art Museum(アメリカ)ページ:Fashion Illustration in the 1920shttps://delart.org/fashion-illustration-in-the-1920s/

レトロポスターAIプロンプトの基本は「4つの縛り」

いろいろ試して分かったのは、「レトロ」「ヴィンテージ」という言葉だけでは、AIは時代を絞ってくれないということです。AIの中で「レトロ」は、50年代も70年代も80年代もごちゃ混ぜの箱になっているイメージです。

そこで、次の4つを必ずプロンプトに入れるようにしました。

  • 時代と媒体:「1920年代」「アールデコのポスター」「雑誌の表紙」
  • 色の数と組み合わせ:「金・黒・クリームの3色」のように限定する(当時の作品がすべて3色だったわけではなく、画面に統一感を出すための手掛かりです)
  • 印刷の質感:リトグラフ、紙の黄ばみ、わずかな版ズレ
  • やってほしくないこと:3D、写真風、ツヤ、ネオン

これをテンプレートにしたのが、こちらのプロンプトです。[]の部分を差し替えれば、いろんな題材で使い回せます。

日本語プロンプト(ChatGPT/Nano Banana向け)

1920年代アメリカのアールデコ様式の広告ポスター。題材は[摩天楼が立ち並ぶニューヨークの街並み]。左右対称の構図、背景に段状の放射線(サンバースト)。配色は金・黒・クリームの3色のみ。リトグラフ印刷の質感、少し黄ばんだ紙、わずかな版ズレ。フラットな平面表現で、3D表現・写真風・光沢・ネオンは使わない。縦長2:3。

英語プロンプト(Midjourney/海外ツール向け)

1920s American Art Deco advertising poster of [a New York skyline of stepped skyscrapers], strict bilateral symmetry, stepped sunburst rays in the background, limited palette of gold, black and cream only, stone lithograph print texture, slightly yellowed paper, subtle misregistration, flat graphic shapes --ar 2:3 --no 3d render, photo, gloss, neon

Midjourneyは英語の方が素直に反応してくれるので、英語版をおすすめします。--noの後ろに並べたものは「入れないで」という指示です。

金・黒・クリーム3色のアールデコ風ニューヨーク摩天楼ポスター

実戦検証①:アールデコ ポスターをAIで作ってみた

「アールデコ風」だけだと、アールヌーヴォーが混ざることが多いらしい

まずはダメな例から。「アールデコ風のポスター、女性」くらいのふわっとした指示で生成してみると若干イメージ違うんですよね。レトロ調が少し弱いというか現代味が出てしまっています。ただこれはこれで好きな人いそう。

日本語プロンプト(ダメな例)

アールデコ風のポスター、女性

英語プロンプト(ダメな例)

art deco style poster, woman
アールヌーヴォー寄りになった女性のポスター

アメリカのAI画像サービスMorphicの解説が分かりやすくて、アールデコは幾何学的で機械時代的(放射線、山形のシェブロン、段々のピラミッド、クロームの流線形)、アールヌーヴォーは有機的で手描き的(むち打つような曲線、ツタやユリ)と整理しています。そして、プロンプトの最初にモチーフの系統を名指しすると、残りの要素が付いてくるとのこと。

参考:Morphic(アメリカ)ページ:Art Deco AI Imageshttps://morphic.com/resources/images/art-deco-ai

モチーフを「名指し」すると一気に締まる

というわけで、モチーフを具体的に指定し直してみました。

日本語プロンプト(改善版)

1920年代のアールデコ ポスター。横顔のフラッパー女性、黒髪のボブに宝石のヘッドバンド。背景は段状の放射線と山形(シェブロン)の幾何学模様、左右対称。エメラルドグリーン・金・黒の3色。影は2段階だけのフラットな塗り。花・ツタ・植物の曲線は使わない。縦長2:3。

英語プロンプト(改善版)

1920s Art Deco poster, profile of a flapper woman with a sleek black bob and jeweled headband, stepped sunburst and chevron geometric background, bilateral symmetry, palette of emerald, gold and black only, flat shapes with two-tone hard-edged shadows --ar 2:3 --no flowers, vines, organic curves, art nouveau
改善版プロンプトで生成した、エメラルド・金・黒の幾何学背景に横顔のフラッパー女性を描いたアールデコ ポスター

ポイントは「影は2段階だけ」という指定です。これを入れないと、AIは親切にグラデーションで立体感を出してくれちゃうんですよね。アールデコはベタ塗りの面で見せるのが気持ちいいので、あえて表現の幅を狭めてあげます。

「数」を指定すると構図が崩れにくい

中国のプロンプト共有サイト「OOMOL Prompt Gallery」に掲載されているアールデコの旅行ポスター用プロンプトを見ると、「3D的な起伏や写実的なテクスチャは入れない」と明記したうえで、装飾の点の数やビルの数まで具体的な数字で指定しています。

参考:OOMOL Prompt Gallery(中国)ページ:装饰艺术风格哥谭市电车海报(Art Deco Gotham Tram Poster)https://prompts.oomol.com/p/art-deco-gotham-tram-poster-16120

これを真似して「ビルは5棟」「放射線は12本」のように数を入れると、構図を整理しやすくなる場合があります。AIは「たくさん」と言われると本当にたくさん描いてしまうので、数字で縛るのは地味に効くことがあります。ただし、指定した数がいつも正確に守られるわけではないので、生成結果は必ず目で数えて確認しましょう。

実戦検証②:1920年代アメリカの雑誌表紙を再現してみた

作家名を使わずに「あの頃の表紙」に寄せる

1920年代の雑誌表紙といえば、有名なイラストレーターの名前がいくつも思い浮かびますよね。ただ今回は、特定の作家名に頼らず、時代背景・画材・構図・色使いといった見た目の特徴だけで再現してみます。特定の作家に寄りかからない分、プロンプトの組み立て方そのものを検証できるのが狙いです。

日本語プロンプト

1920年代アメリカの週刊誌の表紙イラスト。秋の大学フットボールの試合を観戦する、帽子とコート姿の若い男女。油彩とガッシュの手描きイラスト、くっきりした輪郭線と大きな筆のタッチ。背景は無地のクリーム色で余白を広くとる。上部に雑誌名を入れるスペース。写真風・3DCGは不可。縦長3:4。

英語プロンプト

1920s American weekly magazine cover illustration, a young couple in cloche hat and raccoon coat watching a college football game in autumn, hand-painted oil and gouache, crisp contour lines, bold visible brushstrokes, plain cream background with generous negative space, empty band at the top for the masthead --ar 3:4 --no photo, 3d render
1920年代アメリカの雑誌表紙風イラスト。クリーム色の背景にフットボール観戦をする帽子とコート姿の若い男女

コツは「背景は無地で余白を広く」です。当時の表紙は、人物がドンと中央にいて、背景はほぼ何もないものが多いんです。AIは放っておくと背景を描き込みたがるので、こっちから「描かなくていいよ」と言ってあげる必要があります。

パルプマガジン風は「色を強く、紙を安く」

同じ時代でも、安い紙に刷られた大衆小説誌、いわゆるパルプマガジンの表紙になると雰囲気がガラッと変わります。こちらは原色多めで、ザラっとした安い紙の質感がポイントです。

日本語プロンプト

1920年代アメリカのパルプマガジンの表紙。霧の港で探偵がランタンを掲げ、謎の貨物船を見上げる場面。赤・黄・濃い青の強い原色、ドラマチックな斜めの構図。ざらついた安い紙、インクのにじみ、色の版ズレ。手描きの油彩イラスト。縦長2:3。

英語プロンプト

1920s American pulp magazine cover, a detective raising a lantern on a foggy harbor, looking up at a mysterious cargo ship, saturated red, yellow and deep blue, dramatic diagonal composition, cheap rough pulp paper, ink bleed, color misregistration, hand-painted oil illustration --ar 2:3 --no photo, 3d render
1920年代パルプマガジン表紙風イラスト。霧の港でランタンを掲げる探偵と貨物船、赤・黄・青の強い原色

すごくいい感じにできました。クトゥルフ神話が好きな層に刺さりそうです。

実戦検証③:タイトル文字はちゃんと入るのか?

アールデコ ポスターは文字が主役、という話を最初にしました。ここがAIの一番の鬼門です。数年前までは、タイトルを入れようとすると謎の呪文みたいな文字列になっていましたよね……。

文字は「ダブルクォートで囲む」が今の常識

最近のモデルは文字の描画がかなり改善されています。Midjourneyは2026年3月に公開したV8 Alphaで、ダブルクォートで囲んだ文字の描画性能が改善したと公式に発表しています。ただし、文字の正確さは生成結果によってバラつくので、タイトルやサブタイトルは生成後に必ず確認しましょう。

参考:Midjourney公式アップデート(アメリカ)ページ:V8 Alphahttps://updates.midjourney.com/v8-alpha/

日本語プロンプト

1920年代アールデコ様式の旅行ポスター。中央に海をゆく豪華客船、背景は段状の放射線。上部に「ATLANTIC LINE」の文字を細長い装飾的なアールデコ書体で、大きく中央揃えで配置。下部に小さく「NEW YORK — PARIS」。紺・金・クリームの3色、リトグラフの質感。縦長2:3。

英語プロンプト

1920s Art Deco travel poster, an ocean liner sailing at the center, stepped sunburst background, the headline "ATLANTIC LINE" in tall condensed decorative Art Deco lettering, large and centered at the top, small subline "NEW YORK — PARIS" at the bottom, navy, gold and cream palette, lithograph texture --ar 2:3
「ATLANTIC LINE」のタイトル文字が入ったアールデコ風客船ポスター。紺・金・クリームの3色

ダブルクォートで囲んだ短い英語のタイトルは、文字を指定する方法として試しやすい形です。とはいえ、文字の欠落やスペルミス、書体の崩れが起きることもあります。特に小さいサブタイトルや長い文章は崩れやすい傾向があるので、文字は「大きいものを1〜2行まで」にしておくのが無難です。ブログのアイキャッチや広告に使うなら、生成後に1文字ずつ確認して、必要なら画像編集ソフトで直しましょう。

Nano Bananaで文字を入れるなら「どのモデルで作ったか」を確認

文字入れに強いと評判なのがGoogleのNano Bananaです。ただ、Geminiアプリで使える画像生成モデルは1つではありません。Googleの公式ヘルプによると、Nano Banana 2、Nano Banana 2 Lite、Nano Banana Proといった複数のモデルがあり、どれが使われるかはGeminiアプリで選んでいるモデルによって決まるそうです。Nano Banana ProはGoogle AIの有料プランで使えるモデルで、テキストの扱いや細かな制御が得意とされています。

また、有料プランではNano Banana 2で作った画像をProで作り直せますが、Nano Banana 2の1日の使用上限に達すると、Proでの作り直しもできなくなるとのこと。モデルの名前や選び方は今後も変わる可能性があるので、タイトル入りのポスターを作るときは最新の公式ヘルプと、画面上で選んでいるモデルを確認するのがおすすめです。

参考:Gemini アプリ ヘルプ(Google)ページ:Gemini アプリで画像を生成、編集する – パソコン – Gemini アプリ ヘルプhttps://support.google.com/gemini/answer/14286560?hl=ja&co=GENIE.Platform%3DDesktop

ちなみに、中国のAI評価サイトxsct.aiでは、アールデコ風パーティーポスターのテスト項目として「指定した文字が中央に明確に出ているか」「細長い装飾書体になっているか」などを採点基準にしています。自分で生成した画像をチェックするときの目安としても使えるので、のぞいてみると面白いですよ。

参考:xsct.ai(中国)ページ:GPT Image 2 on「Art Deco风格派对海报生成」evaluation resulthttps://xsct.ai/testcase/vg_posterla_007/gpt-image-2?lang=en

ホントにやりがち!レトロポスター生成のNG集

最後に、筆者がやらかしたNGをまとめておきます。全部やりました。

  • 「レトロ」「ヴィンテージ」だけで済ませる:時代がバラバラな「なんちゃってレトロ」になります。年代は必ず数字で書きましょう。
  • 色を指定しない:カラフルで現代的な仕上がりになりがちです。色数を絞ると画面に統一感が出て、狙った時代に寄せやすくなります。
  • 質感を指定しない:ツルっとしたデジタル絵になります。紙・インク・版ズレの3点セットを入れましょう。
  • 「アールデコ」と「アールヌーヴォー」を混同する:曲線とお花が出てきたら、幾何学モチーフを名指しで追加です。
  • 文字を詰め込む:タイトル1行+サブ1行までが安全圏です。それ以上は、後から画像編集ソフトで載せた方が早いです。

まとめ

レトロポスターをAIで作るときは、「レトロ」や「ヴィンテージ」という言葉に頼らず、時代・色・質感・やってほしくないことの4つでしっかり縛るのが近道でした。特に1920年代アメリカを狙うなら、ヨーロッパ発のアールデコ ポスターなのか、アメリカの雑誌表紙なのかを最初に決めておくと、プロンプトがブレません。アールデコ ポスターをAIで作る場合は、放射線やシェブロンといった幾何学モチーフを名指しし、花やツタを除外することでアールヌーヴォーへの脱線を防げます。雑誌表紙なら、手描きの油彩と広い余白を指定するのがコツです。タイトル文字は、最近のMidjourneyやNano Banana Proで描画性能が改善されていて、ダブルクォートで囲んだ短い英単語なら試しやすくなりました。ただし、スペルミスや崩れは今でも起きるので、文字は大きく少なめにし、生成後の確認を忘れないでください。まずは記事内のテンプレートの「[]部分」を差し替えて、あなただけの1920年代を作ってみてください。

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