脱・AIっぽさ

戯画 AI入門|Midjourneyで鳥獣戯画風とカリカチュアを作り分けてみた【プロンプト付き】

2026年10月13日

「戯画 AI」で検索してみたら、出てくる結果がまるで別ジャンルの二本立てで、ちょっと笑ってしまいました。ひとつは国宝《鳥獣戯画》を思わせるウサギやカエルをAIで描く話。もうひとつは、2026年初頭に海外メディアでも紹介された「AIで自分の仕事や特徴を誇張したカリカチュア(誇張した似顔絵)を作る」というトレンドです。

あれ、どっちが正解??と思ったんですが……調べていくと、どちらも「戯画」というキーワードでつながっているんですよね。

そこで今回は、非デザイナー向けの画像生成AIガイドとして、Midjourneyを使って「鳥獣戯画風」と「カリカチュア」の両方を実際に作ってみました。うまくいかなかったプロンプトもあえて載せているので、「こう書くとこうなる」の比較として見てもらえればと思います。

なお、このブログではプライバシーへの配慮から、自分の写真をAIにアップロードしない方法を紹介しています。今回もすべてテキストのプロンプトだけで作っています。

そもそも「戯画」とは?AIで作る前に知っておきたい2つの意味

「戯画」は、滑稽さや風刺を表現した絵、あるいはたわむれに描いた絵を指す言葉です。日本では《鳥獣人物戯画》がよく知られています。一方、英語の caricature(カリカチュア)は、人や物の特徴を誇張して表現する絵のこと。両者は重なる部分がありますが、まったく同じ意味というわけではありません。

つまり「戯画 AI」で検索する人のなかには、鳥獣戯画風の動物画を作りたい人も、人物の特徴を誇張した似顔絵を作りたい人もいると考えられます。

鳥獣戯画は「墨一色・擬人化・勢いのある線」

文化庁の文化遺産オンラインによると、京都・高山寺に伝わる四巻のうち、もっとも有名な甲巻は、勢いのある墨の線でウサギ・サル・カエルを中心とした動物たちの擬人化された動きを描いた作品と紹介されています。平安時代後期・12世紀の紙本墨画です。

参考:文化遺産オンライン(文化庁)「鳥獣人物戯画断簡(甲巻)」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/177985

AIに伝えるべき要素が、実はこの説明にほぼ揃っています。「墨一色」「擬人化」「勢いのある筆の線」。この3点が、あとの検証でかなり効いてきます。

カリカチュアは「特徴を誇張した風刺の絵」

面白いのは、中国のメディアが鳥獣戯画を「日本の戯画(風刺画)の集大成」であり「日本の漫画の開山の作」と紹介している点です。日本ではかわいい動物絵巻のイメージが強いですが、海外から見ると立派な風刺画なんですよね。

参考:澎湃新闻(The Paper)「日本漫画的开山之作,《鸟兽戏画》四卷首次同展」
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_13063553

観光庁の多言語解説では、四巻目の丁巻に、人間が賭け事や競い合いをする様子などが描かれていると紹介されています。《鳥獣人物戯画》は、動物の擬人化だけでなく、人間の姿や当時の営みも描いた作品群なんですね。滑稽さや風刺という観点は、今回のAIイラストを考えるうえでも参考になります。

参考:観光庁 多言語解説文データベース「Choju jinbutsu giga (Scrolls of Frolicking Animals)」
https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/common/001560890.pdf

AIカリカチュアは海外で一大トレンドになっていた

海外の「戯画 AI」事情も調べてみました。

ドイツのゲーム・IT系メディアGameStarでは、ChatGPTに「自分と自分の仕事について知っていることを全部使ってカリカチュアを描いて」と頼む、いわゆる“ジョブ・カリカチュア”の流行を紹介しています。ただし同記事は、AIが見た目を知っているか写真が必要になる点に触れ、データ保護の観点も忘れないようにと注意を促しています。

参考:GameStar「Neuer Social-Media-Trend: So zeigt ihr der Welt mit eurer Job-Karikatur, was ihr tagtäglich macht」
https://www.gamestar.de/artikel/job-karikatur-mit-chatgpt,3448057.html

一方、風刺画の本場フランスでは逆の流れも。フランス文化省のサイトでは、風刺漫画家のネットワークCartooning for Peaceによる展示「Intelligence artificielle : une (r)évolution ?」を紹介していて、世界の風刺漫画家たちがAIそのものをネタにして描いています。AIが戯画を描く一方で、AIが戯画に描かれている。なんとも皮肉が効いています。

参考:Ministère de la Culture「Exposition : quand le dessin de presse s’empare de l’IA」
https://www.culture.gouv.fr/fr/dossiers/le-week-end-culturel-de-l-ia/culture-et-ia-enjeux-et-perspectives/exposition-quand-le-dessin-de-presse-s-empare-de-l-ia

ちなみにAIにカリカチュアを描かせる研究自体はけっこう前からあって、アメリカのFuturismは2018年に、MicrosoftとCity University of Hong Kongが開発したAIを紹介しています。2つのAIを組み合わせ、片方が顔の特徴を誇張し、もう片方がカリカチュア作家特有のペンの線を真似る、という仕組みだったそうです。

参考:Futurism「Check Out These Impressive Caricatures Drawn By AI」
https://futurism.com/artificial-intelligence-draw-caricature

この「形の誇張」と「線のスタイル」を分けて考える発想は、プロンプトを書くときにもそのまま使えます。写真を渡さなくても、言葉で誇張ポイントと画材を指定すれば十分戯画になるのでは?というのが今回の検証テーマです。

検証の前提:Midjourney V8.2で試しました

Midjourney公式ドキュメントによると、2026年7月24日から既定のバージョンはV8.2になっています。今回使ったパラメーターは以下の4つだけです。

  • --ar:縦横比。絵巻物っぽくしたいときは横長に
  • --raw:Midjourney独自の“盛り”を抑えて、プロンプトに素直にする
  • --s(stylize):芸術的なアレンジの強さ。0〜1000で、既定値は100
  • --no:入れてほしくない要素を除外する

参考:Midjourney Docs「Version」
https://docs.midjourney.com/hc/en-us/articles/32199405667853-Version
Midjourney Docs「Stylize」
https://docs.midjourney.com/hc/en-us/articles/32196176868109-Stylize

今回の検証では、Midjourneyには英語版のプロンプトを入力しました。日本語版は、Nano BananaやChatGPTのように日本語が通るツールで試すとき用に置いておきます。

また、Midjourneyの生成結果はモデルや設定、その回ごとのランダム性によって変わります。ここから先の結果は「今回の検証ではこうなった」という記録として読んでください。

検証①鳥獣戯画風のイラストを作ってみる

失敗例:「鳥獣戯画風」の一言だけ

日本語プロンプト鳥獣戯画風のウサギとカエル

英語プロンプト(海外ツール用)rabbit and frog in the style of Choju-giga

鳥獣戯画風の一言プロンプトで生成した、色付きの和風なウサギとカエルのイラスト

まずは何も考えずに作品名だけ。結果は……色付きのかわいい和風イラストになったり、浮世絵っぽい背景がついたりと、なんとなく“日本っぽい”方向に寄ってしまいました。

実は筆者、最初これで10回くらい回して全部微妙だったんです。今回の生成を見る限り、作品名だけだとAIは「Choju-giga=和風」くらいの解釈に寄りやすい印象でした。筆者が悪かった、筆者が悪かったでござる。

成功例:画風を「素材・線・色」に分解して書く

日本語プロンプト擬人化されたウサギとカエルが相撲をとっている。平安時代の絵巻物、古い白い和紙に墨一色の線画、勢いのある筆の線、彩色なし、余白の多い横長の構図

英語プロンプト(海外ツール用)anthropomorphic rabbit and frog sumo wrestling, Heian period Japanese emakimono handscroll, monochrome sumi ink line drawing on aged white washi paper, loose expressive brush strokes, no color, lots of negative space, wide horizontal composition --ar 3:1 --raw --s 50 --no color, shading, 3d render

擬人化したウサギとカエルが相撲をとる、墨一色の絵巻物風線画

先ほどの文化遺産オンラインの説明をそのまま分解して、プロンプトに落とし込みました。ポイントは次の4つです。

  • 画風の名前ではなく、素材(墨・和紙)・線(筆・勢い)・色(なし)に分解する
  • --rawでMidjourneyっぽいドラマチックな演出を抑える
  • --no color, shadingで色と陰影を締め出す
  • --ar 3:1で絵巻物らしい横長にする

今回の生成では、これで一気に「それっぽい」線画に近づきました。ウサギがカエルを投げ飛ばすような、あの有名な場面を思わせる動きも出てきます。

ただし、--noの後ろに並べた語は個別に解釈されるので、複数の要素を除外しても毎回意図どおりになるとは限りません。--rawや低めの--sも「鳥獣戯画風になるスイッチ」ではなく、あくまで今回は効果があった組み合わせです。

stylizeの値で「筆の暴れ具合」が変わる

同じプロンプトで、--s 0と--s 400を比べてみました。

stylize 0と400で比較した、鳥獣戯画風ウサギとカエルの線画の違い

上が「stylize: 0」設定です。そして下が「stylize: 400」。

stylize 0と400で比較した、鳥獣戯画風ウサギとカエルの線画の違い

公式ドキュメント上、stylizeが調整するのは「芸術的な解釈の度合い」です。今回の生成では、0だと線が素直で、どちらかというと図鑑のスケッチ寄り。400まで上げると墨のにじみや飛沫、装飾的な余白が増えて、“アート作品”っぽさが強く出ました。鳥獣戯画らしい軽やかさを狙うなら、今回は0〜100くらいの低めが近い印象でした。

応用:現代版・鳥獣戯画で遊んでみる

日本語プロンプト擬人化されたウサギとカエルがノートパソコンでオンライン会議をしている。カエルは寝落ちしている。平安時代の絵巻物風、墨一色の線画、勢いのある筆の線、彩色なし、和紙の質感

英語プロンプト(海外ツール用)anthropomorphic rabbit and frog having an online meeting on a laptop, the frog has fallen asleep at the desk, Heian period emakimono style, monochrome sumi ink line drawing, expressive brush strokes, no color, washi paper texture --ar 3:1 --raw --s 50 --no color, shading

ウサギとカエルがノートパソコンでオンライン会議をする現代版鳥獣戯画風イラスト

現代の小物を入れても、墨の線で描かれると一気に戯画っぽくなります。ノートパソコンがわざわざ筆で描かれているのが、じわじわきますね。ブログのアイキャッチやSNS投稿にちょうどいいテイストです。

検証②写真なしでカリカチュアを作ってみる

失敗例:「カリカチュア」とだけ書く

日本語プロンプト会社員のカリカチュア

英語プロンプト(海外ツール用)caricature of an office worker

誇張が控えめで普通のイラストに近い会社員のカリカチュア

誇張が弱く、ちょっと頭が大きめなだけの普通のイラストになりました。「何を」誇張するかを指定していないので、AIが無難な落としどころを選んでしまうんですね。

成功例:誇張するパーツと画材を指定する

日本語プロンプト中年の男性エンジニアのカリカチュア。極端に大きな頭と小さな体、大きな丸メガネ、寝ぐせ、キーボードを抱えている。太いペンの線画に水彩で軽く色付け、白背景

英語プロンプト(海外ツール用)caricature of a middle-aged male software engineer, oversized head on a tiny body, huge round glasses, messy bed hair, hugging a keyboard, exaggerated facial features, bold ink pen lines with light watercolor wash, plain white background --ar 4:5 --s 100

大きな頭と丸メガネで誇張した、キーボードを抱える中年エンジニアのカリカチュア

ここで効いたのが、Futurismの研究紹介にあった「形の誇張」と「線のスタイル」を分ける考え方です。前半で頭と体の比率・顔のパーツ・職業がわかる小物を指定し、後半でペン線+水彩という画材を指定しています。

誇張するパーツは1〜2個に絞るのがコツ。あれもこれも大きくすると、ただの変な人になります……。

自分の写真を使わずに「自分の特徴を反映した絵」を作るコツ

写真をアップロードしなくても、言葉で外見や趣味を指定すれば、自分の特徴を反映したイメージイラストは作れます。ただし、これは本人の顔を再現するのとは別の話です。

  • 見た目の特徴を3つほど書き出す(メガネ、髪型、体型など)
  • 職業や趣味は小物で表現する(キーボード、ダーツ、カメラなど)
  • 年齢感や服装も指定し、誇張するポイントを1〜2個に絞る

こうした特徴を組み合わせれば、写真を使わずに自分をモチーフにしたカリカチュアが作れます。本人に似るかどうかは、指定する情報やモデルの解釈次第です。GameStarの記事がデータ保護の観点に触れていたように、写真や個人的な情報をどこまでAIに渡すかは、一度立ち止まって考えておきたいところです。

検証③鳥獣戯画×カリカチュアで「戯画」の本質に戻る

最後に、2つの手法を組み合わせてみました。人間の仕事や日常を動物の行動に置き換え、表情や動きを誇張して描く方法です。《鳥獣人物戯画》にも、動物が人間のように振る舞う場面が描かれています。現代の職場あるあるを動物で表現すれば、特定の人物を直接描かずに、風刺のおもしろさを楽しめます。

日本語プロンプト締め切りに追われて慌てるカエルのWebデザイナーと、腕を組んで見守るウサギのディレクター。平安時代の絵巻物風、墨一色の線画、勢いのある筆の線、カエルの目は大きく誇張、彩色なし、和紙の質感

英語プロンプト(海外ツール用)a frog web designer frantically working against a deadline while a rabbit director watches with arms crossed, Heian period emakimono style, monochrome sumi ink line drawing, expressive brush strokes, exaggerated huge frog eyes, no color, washi paper texture --ar 3:1 --raw --s 50 --no color, shading

締め切りに追われるカエルのWebデザイナーと腕組みするウサギのディレクターを描いた鳥獣戯画風カリカチュア

動物の表情を1か所だけ誇張する、というカリカチュアのテクニックを足しただけで、今回の生成ではぐっと風刺画っぽさが増しました。「動物に置き換える」は、AIで戯画を楽しむうえでの伝家の宝刀になりそうです。社内報やチームのSlackアイコンなんかにも使えそうです。

戯画AIを使うときに気をつけたいこと

実在の人物を勝手にモデルにしない

同僚や有名人をカリカチュアにするのは、本人が笑って許してくれるとは限りません。公開するなら本人の許可を取るのが大前提。迷ったら、今回の検証③のように動物に置き換えるのがいちばん平和です。

原作の再現ではなく「要素」を借りる

鳥獣戯画の有名な場面をそのまま再現しようとするより、墨・和紙・擬人化といった要素を借りてオリジナルの場面を作るほうが、ずっと楽しいですし、自分の作品として使いやすくなります。

風刺は「笑えるネタ」の範囲で

戯画はもともと風刺の文化ですが、誰かを傷つけるための道具ではありません。自分や自分の職業を笑うくらいが、ちょうどいい塩梅だと思います。

まとめ

「戯画 AI」には、鳥獣戯画風のイラストを作る使い方と、人物の特徴を誇張したカリカチュアを作る使い方があります。今回の検証では、作品名や「カリカチュア」という単語だけだと、AIが無難な方向に寄りやすい結果になりました。鳥獣戯画風は「墨一色・和紙・勢いのある筆の線・擬人化」のように要素を分けて指定し、Midjourneyの–raw、–no、横長の–arを組み合わせると、狙った表現に近づけやすくなりました。カリカチュアでは、誇張するパーツを1〜2個に絞り、画材を別に指定する方法を試しています。写真を使わなくても、自分の特徴を反映したイメージは作れますが、本人の顔の再現とは別物です。人間の日常を動物に置き換える方法なら、特定の人物を描かずに風刺のおもしろさを楽しめます。生成結果はモデルや設定によって変わるので、今回のプロンプトを出発点に、自分の職業や日常のあるあるネタで試してみてください。

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