※諸説あり
歩きスマホをしている人を見て「頭おかしい」「うざい」と感じるのは、決して珍しい感覚ではありません。 では実際に注意するとき、どう声をかければトラブルにならずに済むのでしょうか。 専門家の助言や、視覚障害者団体の実態調査、実際に起きたトラブル事例をもとに、プロジェクトが整理します。
歩きスマホの「うざさ」「危険さ」を最も切実に訴えているのが、視覚障害者の当事者団体です。 全国61団体・約5万人が加盟する日本盲人会連合(日盲連)の情報部長は、2018年にACジャパンの 広告制作にあわせて会員調査を行ったところ、実に2人に1人が歩きスマホによって何らかの被害を 受けたことがあると回答したと明かしています。取材に応じた情報部長自身も、歩きスマホをしている人と ぶつかってけがをした経験があるといいます。白杖を使っていても、画面に集中している相手には気づいてもらえない。 「頭おかしい」「うざい」という感情は、当事者にとってはもっと切実な「被害」の言葉に置き換わります。
出典:Yahoo!ニュース「『歩きスマホ』法令で規制すべきか 迷惑超えて被害の訴え深刻」 https://news.yahoo.co.jp/feature/1433/
視覚障害者に限らず、子供のように視野が狭く周囲の変化に気づきにくい歩行者も、 歩きスマホをしている人との接触リスクが高いとされています。詳しくは 子供と歩きスマホで解説しています。
2023年4月に「歩きスマホの防止に関する条例」を施行した愛知県江南市では、条例制定の背景の一つとして、 駅前で歩きスマホをしていた人が視覚障害者と接触し、障害者が手に持っていた杖を折ってしまうという トラブルが実際に起きていたことが伝えられています。この条例は東海3県で初めて歩きスマホに限定して 制定されたもので、罰則こそありませんが、条例に基づいて違反者にスマホ操作をやめるよう注意できる という点が特徴です。個人が注意するのが難しいからこそ、自治体が制度として後押しする動きが生まれています。 江南市以外の自治体条例については自治体別の条例まとめで整理しています。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「歩きスマホ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/歩きスマホ
では、実際に注意する場面ではどう声をかければよいのでしょうか。漫画家の田房永子さんは、 マナー違反を正そうとして「逆ギレ」されるリスクを避けつつ自分の気持ちを伝える方法として、 主語を相手ではなく自分にした「Iメッセージ」を勧めています。「あなたは迷惑だ」と相手を主語にして 伝えると相手は責められたと感じて反発しやすくなりますが、「私はとても迷惑しています」というように 自分を主語にして伝えると、相手を刺激しにくいといいます。田房さんは、進路を妨害されたり、 明らかに事故につながりそうな危険な場面でなければ、基本的には気にしないようにしているとも述べており、 すべての歩きスマホに反応する必要はない、という線引きの大切さも示唆しています。
出典:PRESIDENT Online「『私たちは迷惑しています』と言ってはいけない…歩きスマホで向かってくる人に逆ギレされない『声のかけ方』」 https://president.jp/articles/-/69895
同記事では、渋谷駅の雑踏で、歩きスマホをしていた人のスマホを手で叩き落とす「スマホチョップおじさん」を 目撃した体験談も紹介されています。腹立たしい気持ちは理解できるものの、実力行使はトラブルを エスカレートさせるだけで解決にはならないという指摘です。プロジェクトとしても、注意の第一歩は 「相手の行動を力で止めること」ではなく「自分の気持ちを言葉で伝えること」だと考えています。
出典:PRESIDENT Online「『私たちは迷惑しています』と言ってはいけない…歩きスマホで向かってくる人に逆ギレされない『声のかけ方』」 https://president.jp/articles/-/69895
「やめましょう、歩きスマホ。」キャンペーンを主導する電気通信事業者協会の担当者は、取材に対し 「事業者としては規制を望んでいるわけではありません。だからキャンペーンを続けています。強制的に 止める前に、立ち止まってもらう習慣が一番望ましいと思います。電車内では電話をしないことも定着しました。 歩きスマホにも、粘り強い取り組みが必要と考えています」と述べています。条例による禁止を求める声が 強まる一方で、業界団体は罰則よりも習慣づけによる解決を志向しているのが実情です。
出典:Yahoo!ニュース「『歩きスマホ』法令で規制すべきか 迷惑超えて被害の訴え深刻」 https://news.yahoo.co.jp/feature/1433/
なお、同記事によれば警察庁も歩きスマホのトラブルに関する統計は取っていないとのことです。 明確な件数として集計されていないだけで、けがやトラブルが珍しいものではないことは、 日盲連の調査結果からもうかがえます。統計がないからといって、問題が小さいとは限らない、 という点は留意しておきたいところです。
出典:Yahoo!ニュース「『歩きスマホ』法令で規制すべきか 迷惑超えて被害の訴え深刻」 https://news.yahoo.co.jp/feature/1433/
MMD研究所が継続的に実施している調査によれば、歩きスマホを「危ない」と感じている人の割合は、 2014年調査で98.6%、2016年調査で98.3%、2021年調査でも93.4%と、一貫して9割を超えています。 一方で、2021年調査では歩きスマホの規制の必要性について「必要があると思う」と答えた人は73.0%にとどまり、 「危険だと分かってはいるが、全面的な規制までは求めていない」という民意の複雑さがうかがえます。 規制を望む人の内訳では「罰則があった方がいい」が45.3%、「警察からの注意」が35.8%と、 取り締まりよりも注意喚起を求める声のほうがやや優勢でした。
出典:マイナビニュース「歩きスマホ、93%が『危ない』と回答」(MMD研究所調査の紹介記事) https://news.mynavi.jp/article/20211020-2164270/
ここまで紹介してきた専門家の助言や当事者の声を踏まえると、実際に声をかける場面では 次の3点を意識するとよさそうです。
①本当に注意が必要な場面か見極める。 田房さんが指摘する通り、進路妨害や衝突の危険がある場面以外は、無理に注意せず距離を取ることを 優先しても構いません。すべての歩きスマホに反応する必要はなく、まずは自分の安全を確保することが先決です。
②伝えるときは「私」を主語にする。 「邪魔です」「危ないですよ」ではなく、「すみません、通していただけますか」「ぶつかりそうで 私が困っています」というように、自分の状況・感情を主語にして伝えると、相手が責められたと 感じにくく、逆ギレなどのトラブルに発展しにくいとされています。
③実力行使はしない。 スマホを取り上げる、叩き落とすといった行為は、たとえ相手のマナー違反が原因でも、 暴行やトラブルに発展するリスクがあります。危険を感じた場合は、注意するより先に、 その場を離れる・駅員や警備員など第三者に助けを求めるという選択肢も検討してください。
ここまでの情報を踏まえると、歩きスマホへの向き合い方としては次のような整理ができそうです。 まず、進路妨害や衝突の危険がある場面以外は、無理に注意せず距離を取ることを優先する。 注意する場合は、相手を主語にした非難ではなく「私は困っている」という伝え方を選ぶ。 そして、スマホを叩き落とすような実力行使は行わない。これらはあくまで一般的な傾向であり、 個々の状況や相手の様子によって適切な対応は変わります。無理をせず、安全を最優先にしてください。
ここまで読んで、歩きスマホの危うさに少しでも共感していただけたなら、それだけで十分です。 下のボタンを押すと、その気持ちが「顔を上げる宣言数」として1カウント加算されます。 大きな決意でなくて構いません。まずはワンクリックで、賛同の意思をお寄せください。
今日から、顔を上げる。
「歩きスマホ撲滅」を掲げる当プロジェクトとしては、本音を言えば「もっと強く注意すべきだ」と 言いたい気持ちもあります。しかし今回調べてわかったのは、注意の仕方を間違えると、 かえってトラブルを大きくしてしまうという現実でした。正義感だけで突っ走らないことの大切さを、 専門家の助言から学ばせていただきました。
特に印象に残ったのは、視覚障害者の方々が置かれている状況です。「頭おかしい」「うざい」という 感情の背後には、当事者にとってはもっと切実な安全の問題があります。声をかけるかどうかの前に、 まずこうした実態を知ること自体が、最初の一歩なのかもしれません。